大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)228号 判決 1957年2月15日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由第一点について。

原判決の確定した事実によれば、昭和二四年五月二三日、貸主上告人、共同借主被上告人等外一名間において、元金三五万円、弁済期三〇日後、利息一ケ月(三〇日)一割、利息を支払えば債務者の希望により順次弁済期を延期する約旨の消費貸借契約がなされ、同時にこれに付随して、弁済期に右元金を返済しないときは、その八倍半強にも当る当時の時価金三〇六万七〇〇〇円相当の本件不動産の所有権を代物弁済として上告人に移転する契約が締結されたというのである。かかる場合、他に特別な事情の立証がなされていない本件においては、右代物弁済の予約は、債権者が債務者の窮迫に乗じ締結されたものと認むべく、したがつて右予約は公序良俗に反する無効のものと解するを相当とする。それ故この点に関する原判決の判断は結局正当であるから、論旨は理由がない。

同第二点について。

原判決は右月一割の利息が高利であるとの理由だけで右代物弁済の予約を無効としたものでないことは判文上明らかであつて、所論は原判示を正解しない立論と解される。論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例